許容される日本語

日々変化する日本語。すでに許容されたのか、まだ誤用と扱うべきなのか。徒然なるままに考えます。

*当blogより引用する際は出典を明記してください。

2013-01-01から1年間の記事一覧

つけまわし

先の臨時国会で、特定秘密保護法案の審議の陰に隠れていつの間にやら成立していた、いわゆる社会保障制度改革のプログラム法。社会保障制度改革の「全体像及び進め方を明らかにする」(持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律第一…

つけまわす

敷居が高い/ハードルが高い

「敷居が高い 不義理や面目のないことがあって、その人の家へ行きにくい。 [補説]文化庁が発表した平成20年度『国語に関する世論調査』では、『あそこは敷居が高い』を、本来の意味である『相手に不義理などをしてしまい、行きにくい』で使う人が42.1パーセ…

十分/充分

連城三紀彦さん死去 「恋文」で84年直木賞「戻り川心中」 10月23日付日刊スポーツ社会面の見出しを見て驚いた。 推理小説家だったころから好きで、数えてみたら書棚には文庫本が54冊。この十年ほどは読んでいなかったが好きな作家であることに変わりはない。…

有効期間/有効期限

「期間」と「期限」の違いはなんでしょう。 「期間」は「きまった時からきまった時までの間」(新小辞林第二版)。 「期限」は「前もって決めた時期」(同)です。 たとえば、11月1日から1箇月有効の通勤定期券の「有効期間」とは11月1日から11月30日までの3…

してございます

政治家、役人、ビジネスマン、さまざまな職種の主に中高年男性の多くが「してございます」「(動詞連用形)+てございます」を用います。昨今では若い人が使うのを聞くことも増えました。とはいえ「してございます」に違和感を覚える人も少なくありません。 …

手軽/手頃

「手軽な夢から、でっかい夢まで。」と書かれたポスターが貼ってあったのは宝くじ売場。そういえば先日「価格がお手軽になりました」という宣伝もみかけました。 どうも昨今、「手軽な」が「手頃な」と混同して用いられているようです。 「手軽」は「手数が…

コ°コ°コ°ジ(鼻濁音のルール)

先日、国際会議に出席した首相が開催国の外相(著名なベテラン外交官)の名前をいいあやまり、それをそのままテロップにした公共放送にあきれた。が、それよりも公共放送になんとかしてほしいのが、ガ行鼻濁音であります。 ガ行鼻濁音(カ行に°をつけて表し…

話/話し、氷/凍り

名詞と動詞の活用形が同じ音であるとき、書きことばでは表記によって区別します。名詞は「〈前略〉事物の名を表す語〈後略〉」(新潮国語辞典新装改訂版)、動詞は「〈前略〉事物の動作・作用・状態・存在を表す語〈後略〉」(同)で異なることばですから、…

職責

週ベ9.2号「岡江昇三郎のWEEKLY COLUMN」冒頭。 「先週号で『銚子商高が真紅の大旗を初めて千葉にもたらした』と書いたら『野球専門誌の記者がこんな間違いを書くとは。猛省せよ!』というお叱りを多くの読者から頂戴してしまった。まったくの話、お恥ずかし…

しゃべられる/しゃべれる

「ら抜きことば」が問題視されるようになってずいぶん経ちます。 第20期国語審議会(1995年)の審議経過報告「新しい時代に応じた国語施策について」に「この言い方は現時点ではなお共通語においては誤りとされ、少なくとも新聞等ではほとんど用いられていな…

原紙/原本

ことばが使われなくなる理由の一つに、ことばが表す物そのものが使われなくなることが挙げられます。 「原紙」の意味を辞書でひくと、まず、「楮(コウゾ)の皮を原料としてすいた堅く厚い紙。蚕卵紙に用いる」(新潮国語辞典新装改訂版)とあります。「楮の…

計る/測る/量る

表意文字である漢字には、一見して意味が解るという特長があります。「収める」とあれば漢字から「収拾」「収容」などを連想し、文全体の理解も早くなります。「納める」なら「納付」「納会」、「治める」なら「治安」「治癒」、「修める」なら「修業」「修…

主要因

「主要因」は文字どおり「主な要因」の意味で用いられます。 「要因」は「物事がそうなった主要な原因」(Yahoo!辞書:大辞泉)であるから、「主な主要な原因」とは重言(「1 同じ意味の語を重ねた言い方。『豌豆豆(えんどうまめ)』『半紙の紙』『馬から…

ダース・ヴェイダーとルーク(4才)

J.J.エイブラムズの新しいスタートレック、第1作は巧いエンタテインメントと感心したし美術・衣裳やキャストはとてもよかったのだが、時が経つにつれ、やっぱ宇宙大作戦ファンとしてあの設定は許容範囲を超えてるよな〜って不満が高まってきて(何がそんなに…

兼ね合わせる

先日、校閲中に「兼ね合わせる」なることばにお目にかかりました。見聞きしたことがなかったので辞書をひいてみましたが「兼ね合わせる」は載っていません。 Googleで検索してみるとかなりの件数がヒットします。どうも、「兼ね備える」(「二つ以上のものを…

パーセント/ポイント(パーセンテージポイント、パーセントポイント)

パーセントとはご存じのとおり「百分の幾つに当るかを示す語。百分率〈後略〉」(広辞苑第二版補訂版)です。 さて、「当社製品の市場シェアが前年度の20パーセントに比べて10パーセント増えた」というとき、今年度の市場シェアは何パーセントでしょうか。 A…

I LOVE RENGERS!

英語教育の前にローマ字を教えてはならない、が持論。 たとえば「a」は、日本語の「ア」に近い発音で読むことは多くない。「ェア」だったり、「ァ<曖昧母音を仮に表記してみた」、「エイ」、「オー」、「アー」だったりする。 そもそも英語は一文字一音では…

マイナス3億円の赤字

大半の企業や団体で2012年度決算発表が済んだころでしょうか。その際に気をつけたいのが「マイナス3億円の赤字」といった表現です。 ここで数学の初歩。2−1=1、ですね。そして、2−(−1)=3、です。マイナスをマイナスするとプラスになります。 つまり、収…

解放感/開放感

現代の日本では、文字は書くものというより、入力し変換するものになってきました。 もちろん、文章は手書きでなければいかん、などといいたいのではありません(もしも「原稿は手書きで提出のこと」と指示されたら、かしこまりましたと受けはしても、正直な…

性的嗜好/性的指向

先月、北米四大プロスポーツ(NFL・NBA・MLB・NHL)の選手が初めて同性愛者であるとカミングアウトし、北米プロサッカーでは初めて同性愛者の選手がプレイ、フランスでも同性同士の結婚が合法化されました。 日本では同性婚が広く議論されることはありません…

師弟は三世

先々週の週ベ5.20号で「師弟は三世」の「三世」に「さんせい」とルビ(ふりがな)がふられててあらあらと思ったら(「三世」はもちろん「さんせい」とも読むが、それは「ルパン三世」〈山田康雄さん、納谷悟朗さんの御冥福をお祈りします〉とか「父・子・孫…

差し上げる/させていただく

「のちほどお電話を差し上げます」――企業等の電話応対マニュアルにはかならず記載されていそうなこのいいまわし、どうやら、昨今は好まれないようです。 「差し上げる」は「上から目線」だから顧客や取引先を相手に用いるのはもってのほか、ということらしい…

散々たる

「敬愛なるベートーヴェン」という映画の邦題がありました。注意をひくため文法上の誤りをわざと犯した、とみることも可能ではあります。ただ、あまり巧みな広報戦術とは思えません。印象に残ればなんでもよいわけではないでしょう。与えたのが悪い印象では…

半端ない

先週だけで2回も「思考錯誤」にお目にかかりました。スポーツ新聞の見出しなら、だじゃれね、と思うけど、そうじゃないから、誤植なのかなにか意図があるのかが判らない。「」とかでくくってればわざとだと判るのに(文脈からして単なる誤変換と思われますが…

きわめつけ/きわめつき

「青田買い」は「1 稲の収穫前に、その田の収穫量を見越して先買いすること。2 企業が人材確保のため、卒業予定の学生の採用を早くから内定すること」(Yahoo!辞書:大辞泉)であり、収穫前のまだ青い田を「買」っておくことです。稲穂も出ていない青々と…

すごいおいしい

「形容詞」とは、「品詞の一。日本語では物事の性質や状態を表わし、用言に属する」(新潮国語辞典新装改訂版)ことばです。用言ですから活用し、用言に接続するときは連用形をとります。形容詞「すごい」が形容詞「おいしい」を修飾する場合は「すごくおい…

パネラー

「パネリスト」ということばを手元の辞書で調べたところ、広辞苑第二版補訂版、新潮国語辞典新装改訂版、新小辞林第二版には載っていません。 Yahoo!辞書ではどうかというと、大辞林では「パネル-ディスカッションの問題提起者・討論者。パネラー」、大辞泉…

アブレイユ

北海道日本ハムファイターズに所属するミチェル・アブレイユの登録表記がどーにもだめだ。 スペルはMichel Abreu。Cuba出身なので母語はスペイン語のはず、てことで、スペイン語読みすればミチェル・アブレウである(2007年9月3日付記事をご参照ください)。…

ためしにして見る

「補助動詞」とは、「動詞が本来の意味と独立性を失って、他の語の下に付いて付属的な意味(断定・敬意・動作の様態など)を添えるだけのもの」(新潮国語辞典新装改訂版)です。 例として、「○○である」の「ある」、「○○している」の「いる」、「○○してくだ…