許容される日本語

日々変化する日本語。すでに許容されたのか、まだ誤用と扱うべきなのか。徒然なるままに考えます。

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すごいおいしい

「形容詞」とは、「品詞の一。日本語では物事の性質や状態を表わし、用言に属する」(新潮国語辞典新装改訂版)ことばです。用言ですから活用し、用言に接続するときは連用形をとります。形容詞「すごい」が形容詞「おいしい」を修飾する場合は「すごくおいしい」となります。
(形容詞〈口語〉の活用語尾は、未然形-かろ、連用形-く/かっ、終止形-い、連体形-い、仮定形-けれ、です。命令形はありません)
「すごく」を副詞とする説もありますが、いずれにせよ「すごいおいしい」は文法上は誤りなので、くだけた会話以外では使わないほうがよさそうです。


ところで、形容詞「凄い」は本来、「ぞっとするほど恐ろしく思う。たいそう気味が悪い」(Yahoo!辞書:大辞林)または「恐ろしいほどすぐれている。ぞっとするほどすばらしい」(同)の意で用いられました。原義からすれば、たとえば「凄い美人」なら、この世のものとは思われない、どこかぞっとするほどの美しさをもつ人、になります。
「心に強い衝撃を受けて、ぞっと身にしみるさまの意が原義。平安時代から見える語で、良い意味でも悪い意味でも用いられた。近代以降、心理的圧迫感を伴わない用法が生じた」(同)ものの、衝撃を受けるほどでもない単なる「程度がはなはだしい」(同)形容に使うといささか俗な印象を与えます。
つまり、あらたまった席で料理をほめるときには、「すごいおいしい」「すごくおいしい」のどちらも避けたほうが無難だということです。
なお、「すごい/すごく」を「とても」などに換えるだけよりも、「素材の味が生きていますね」「上品な味わいですね」などと具体的に表現できれば、続く会話もはずむでしょう。