許容される日本語

日々変化する日本語。すでに許容されたのか、まだ誤用と扱うべきなのか。徒然なるままに考えます。

*当blogより引用する際は出典を明記してください。

2011-01-01から1年間の記事一覧

厚い戦い

アナウンサーの国語力にはなにも期待していないので、たとえば、「間髪を入れず」を「かん、はつをいれず」、「綺羅星のごとく」を「きら、ほしのごとく」と正しく読むアナウンサーがいたらかえって、びっくりしてひっくりかえってドインてなことになってし…

特例公債法案が成立した

「法案」とは「法律の案文。法律の草案」(新潮国語辞典新装改訂版)であり、「成立」とは「なりたつこと。できあがること〈後略〉」(同)です。ちなみに「草案」は「下書き。草稿」(同)。 こういう法律をつくるべきだと策定した「法案」を発案者が国会に…

行う/行なう

「おこなう」を漢字かなまじり文で書く場合、送りがなはなんでしょうか。 昭和48年内閣告示「送り仮名の付け方」では、「通則1 本則 活用のある語(中略)は、活用語尾を送る」とします。 「おこなう」は、行わ(ない)-行い(ます)-行う-行う(とき)-行え…

してみえる

以前電話応対部門の統轄をしていたとき、商品知識が十分でさまざまな問い合わせに柔軟に対応でき、話し方も感じがよいオペレータさんがいらしてとても助かりました。 しかしある日、ふと気になることが。 「○○さんって、もしかして名古屋出身では?」 「えー…

1999年ぶり

先日、ニュースを聞いていたら「1999年ぶり」ということばが耳にとびこんできました。 サッカー女子W杯準決勝でアメリカ合衆国代表が勝ったとの内容だったためすぐに「1999年以来」の誤用だと判ったものの、そういえば、「ぶり」と「以来」の混同にはよくお…

疑問をひもとく

「繙く」は、「(古くは書物は巻き物であって、紐で結んであったことから)書物を読む」(新潮国語辞典新装改訂版)です。 語源を知れば誤用の余地がないことばなのですが、いまや帙(「書物のいたみを防ぐために包むおおい」〈同〉。これも紐で閉じてあった…

説明申し上げます

「ゆれる日本語」としてもっとも関心が高いのは敬語のように思われます。 敬語にはかならず「敬意の向う先」があるため、敬語を使う相手に「正しい敬語が使われた」=「敬意を示された」と感じてもらわねばなりません。自分は正しいと思っても相手はまちがい…

最古の銀河

webで調べものをしていて、とある民放TV局アナウンサーの7年ほど前のblogがひっかかりました。 モーニングワイドショーの新聞記事を紹介するコーナーで使うのか、最古の銀河発見の記事の話題で、ワイドショーのプロデューサーが「意味がわかんねえよ。埴輪じ…

遅ばせ

たいへん広く使われすっかり許容されたようでも辞書には採用されていないことばというものがあります。「遅ばせ」もそのひとつでしょう。ふつう「おそばせ」と読みますが「おくばせ」と読む人も少数ながらいるようです。 「遅まきながら」「遅ればせながら」…

自殺を図ろうとした

「図る」のゆれについては過去にも書きましたが、先日NHKのニュースで「自殺を図ろうとした」と言っていたため、再度とりあげます。 従来の日本語ではふつう「図ろうとした」とはいいません。これはどういう意味なのでしょう。 「図る」はこの場合「企てる。…

いちばん最初

前々週が消化不良だったので、重複表現についてもういちど書いておきます。これに伴い前々週の記事は書き直しました。 重言の例として挙がることの多い 古(いにしえ)の昔の武士の侍が、山の中なる山中で、馬から落ちて落馬して、女の婦人に笑われて、赤い…

()(欧文用パーレン)

イマドキのデザイナーさん/オペレーターさんに思うところはいくつかあって、そのひとつが、 なぜ和文組版に欧文用パーレンを使って平気なの? でございます。 パーレンとは「()」のことで、これには和文用と欧文用があります。 和文用は(これ)で、 欧文…

約2分ほど

「約2分ほど遅れて運行しております」。「約2分遅れて〜」または「2分ほど遅れて〜」よりよほど頻繁に聞くのではないでしょうか。 「およそ1箇月程度」「だいたい1年くらい」など、近年は曖昧表現の重複をよく耳にします。日常会話でつい口にしてしまうだけ…

小学生以下は無料

微積分がわからなくとも日常生活で困ることはまずないものの、数学を学ぶ必要がないとはいえません。数学は論理的思考の基礎ですし、加減乗除程度は理解していなければ日常生活にも不自由します。等号・不等号もそうした常識の範囲でしょう。「小学生以下は…

大きく二つです

「原因は大きく二つです」。 昨今よく見る/聞く文です。ただしよくみるとおかしいことがわかります。 まず文法の面から考えましょう。主語は「原因は」、述語は「二つです」で、「大きく」は述語を修飾する修飾語です。さらに、「大きく」は、副詞ではなく…

居抜きことば

動詞の連用形+接続助詞「て」に続いて動作の継続や状態の存続を表す補助動詞は「いる」です。「る」ではありません。 「している」を「してる」、「しています」を「してます」といった居抜きことばは、くだけた会話、軽いエッセイ、語り口を活かすインタビ…

暮しぶりが伺える

日本語には同音異義語が多く、「伺う」と「窺う」もその一例です。「伺う」は「『問う』『聞く』『訪れる』の謙称」(新小辞林第二版)、「窺う」は「1 のぞき見する。(相手の)動静を探る。2 ねらう」(同)の意ですが、「窺う」が常用漢字表にないため、…

ダントツの最下位

俗語ではあるものの、「ダントツ(断トツ、だんトツとも表記)」はごくふつうに使われることばです。長年使われてきたため古くさい印象すらあります。 長年のあいだに語源が忘れられてしまったのか、近年では誤用もめだちます。「ダントツの最下位」などです…

状況を鑑み

日本語は、一つの助詞によって文の意味が変わり得る言語です。この「日本語は」の「は」をべつの助詞に替えてみればわかります。「が」、「も」、「こそ」……。文意の伝わる文章を書く際に助詞の使い分けは重要です。 しかし、文章は複数の文、段落で構成され…

profession

先日、ある野球週刊誌に下記の誤変換がありました。 「家族を仙台から非難させた選手」 この雑誌、誤植には定評があり、いつもなら笑ってすませるところです。しかしこれにはひっかかりました。 「非難」はネガティブなニュアンスの言葉です。被災地から家族…

的を得る/当を得る

*2015年5月17日に全面改稿しました。 「得る」は日本語では「1 自分の手に入れる。2 (補助動詞的に用いて)できる。可能である。3 取り用いる。4 得意とする。5 理解する」(新潮国語辞典新装改訂版)です。 「的」は「1 弓・鉄砲などの練習の際に目標とし…

…(三点リーダ)

小説などで、余韻をもたせたり語尾を濁すニュアンスを表現したりするときに使われるのが「…」。三点リーダ(さんてんりーだ)といいます。 変換方法は日本語入力ソフトによって違うと思いますが(ことえりは「option+;」だ)、「。。。」とか「・・・」と…

ぼくはあなごではなくうなぎだ

料理店で連れがあなごを注文したあとに「ぼくはあなごではなくうなぎだ」と店員に伝えたとします。この「ではなく」は、格助詞「で」+係助詞「は」+形容詞「ない」連用形です。 このうち「は」は強調の係助詞で、「あなごでない」ことを強調しています。あ…

ご乗車できます

尊敬語は ご/お○○になる 謙譲語は ご/お○○する が基本です。 また、動詞の可能表現は下記のとおりです。 五段活用動詞…語幹+れる/られる または 可能動詞化する(「書ける」「読める」などのように下一段活用にする) 上一段活用・下一段活用・カ行変格…

「マ」ニフェスト

「雨」と「飴」、「花」と「鼻」、「鉢」と「蜂」など、アクセントによって意味が異なる日本語はたくさんあります。英語では、日本語の同音異義語とまではいかないものの、綴りは同じなのに名詞や形容詞と動詞でアクセントが異なる言葉があります。‘import’‘…

おあきのせき

珍しく週イチ更新が続いたので調子にのって、月の最終週はblogの本筋からやや離れて書いてみようかと。 今回は雑記です。 先日のランチタイム、急いでいたため定食屋と思しき店に飛びこむ。と、いきなり店員が―― 「よろこんでいらっしゃいませ〜」 ……「喜ん…

一角を担う

一生懸命、独壇場といったすでに許容された誤用や、青田刈り、汚名挽回といった広く使われる誤用は数々あります。これらを指摘する書籍やTV番組なども多く、日本語の誤用にいくらかでも興味がある人には「常識」のように知られています。 もちろんそれだけが…

激を飛ばす/喝を入れる

「監督が選手に激を飛ばした」はまず、「激」の字が誤りです。正しくは「檄」で、常用漢字表に採用されていないのでカナ書きにすることもあります。 この「檄」は「召集の文書」または「敵の非をあげ自分の徳を述べて大衆に論告する文書。ふれぶみ」(新潮国…

実家でのんびりさせていただきました

敬語は尊敬の気持を表すものです。このうち尊敬語は、相手への敬意を直接表現します。謙譲語は自分を低めることで相手を高め、尊敬を示します。 さて近年、謙譲語の「させていただく」が多用されるようになりました。尊敬する相手の想定が難しい場合であろう…