許容される日本語

日々変化する日本語。すでに許容されたのか、まだ誤用と扱うべきなのか。徒然なるままに考えます。

*当blogより引用する際は出典を明記してください。

性的嗜好/性的指向

先月、北米四大プロスポーツNFLNBAMLB・NHL)の選手が初めて同性愛者であるとカミングアウトし、北米プロサッカーでは初めて同性愛者の選手がプレイ、フランスでも同性同士の結婚が合法化されました。
日本では同性婚が広く議論されることはありませんが、人権の観点からするとそれでよいのかは疑問です。そして気を配りたいのが、「性的しこう」を漢字でどう書くか。
「嗜好」は「ある物を特に好み、それに親しむこと。好み。主に飲食物についていう」(Yahoo!辞書:大辞泉)。
「指向」は「ある方向・目的に向かうこと。また、方向や目的を指示してその方に向かわせること。志向」(同)です。
性的に惹かれる対象が異性か同性か両性かといったことは、甘党か辛党かというのとは異なります。単なる好みではないので、「性的嗜好」でなく「性的指向」と書くべきでしょう。
確たる理由(宗教上の信念など)があって「性的嗜好」と書くのは表現の自由の範疇に入るかもしれませんが、かな漢字変換ソフトウェアが表示したものをそのままにしておいただけなら配慮が足りません。



上記の「北米四大プロスポーツ」を「アメリカ四大プロスポーツ」と書くのも避けたいもの。川崎(正しくはタツサキ)宗則選手が所属するブルージェイズトロントにあるように、NFLNBAMLB・NHLは米国とカナダのプロリーグだからです。
わたしは『政治的に正しいおとぎ話』のあと『政治的にもっと正しいおとぎ話』さらには『政治的に正しいクリスマス物語』まで買ったクチなので「political correctness」の難点も重々承知しておりますが、「ことば狩り」に反論できるのは、細部にまで心を配って真摯にことばを用いる人だけだと思うのです。