許容される日本語

日々変化する日本語。すでに許容されたのか、まだ誤用と扱うべきなのか。徒然なるままに考えます。

*当blogより引用する際は出典を明記してください。

してございます

政治家、役人、ビジネスマン、さまざまな職種の主に中高年男性の多くが「してございます」「(動詞連用形)+てございます」を用います。昨今では若い人が使うのを聞くことも増えました。とはいえ「してございます」に違和感を覚える人も少なくありません。


「ございます」は「ある」の叮嚀語です。「○○がございます(「○○がある」の叮嚀語)」や「○○でございます(「○○である」の叮嚀語)」をおかしな敬語だと思う人はいません。
では「○○してございます/○○てございます」の何が違和感を生むのでしょうか。
叮嚀語を常体(敬語を使わない文体)に直したときに「ある」でなく「いる」となる用例です。


「ただいま検討してございます」>「今検討している」


この例では、常体が「いる」ですから、「検討しております」が適切です。「ございます」を用いたいのであれば「検討中でございます」(常体は「検討中である」)とすればよいでしょう。



なお、


「こちらにご用意してございます」>「ここに用意してある」


は、誤りではないのですが、「してある」は要は「すでに行った」ということなので、言外に「もうやったよ」「してあるじゃないか」の意味を含むととられる可能性があります。「ご用意いたしました」(常体は「用意した」)のほうがすっきりして印象がよいのではないでしょうか。



これから敬語に慣れようという人には、相手が「正しい敬語を使ってもらった」と感じてくれないおそれのある「してございます」よりも、「おります」「いたします」などの基本に忠実な敬語の使用をお勧めします。




注記。「ありがとうございます」は「ありがたくある」の叮嚀語です。
注記2。方言によっては「してござる」は正しい尊敬語です。ただしそれを共通語の「してございます」にそのまま変換することはできません。