許容される日本語

日々変化する日本語。すでに許容されたのか、まだ誤用と扱うべきなのか。徒然なるままに考えます。

*当blogより引用する際は出典を明記してください。

主要因

「主要因」は文字どおり「主な要因」の意味で用いられます。
「要因」は「物事がそうなった主要な原因」(Yahoo!辞書:大辞泉)であるから、「主な主要な原因」とは重言(「1 同じ意味の語を重ねた言い方。『豌豆豆(えんどうまめ)』『半紙の紙』『馬から落馬する』など」〈同〉)ではないかと思ったのですが、念のためいくつかの辞書を調べてみると、「要因=主な原因」としないものもあることがわかりました。
「主な原因」ではない説明は、「物事の成立に必要な原因」(広辞苑第二版補訂版)です。ただし広辞苑はこの説明に「主要な原因」と続けており、「必要な原因」「主要な原因」のどちらの意味も認めるようです。


「主要」派:旺文社国語辞典、集英社国語辞典*、新選国語辞典、新潮国語辞典、大辞泉大辞林明鏡国語辞典**、例解新国語辞典
「必要」派:現代標準国語辞典、三省堂国語辞典新明解国語辞典***
両論併記派:岩波国語辞典、現代新国語辞典、広辞苑
*=主な原因。因子。
**=主な原因。主な要素。
***=〔「要」も「因」も同義〕因子。


「要」は「強く求める/必要である/たいせつな。だいじな。重要な/必要な/だいたいの。およその〈後略〉」(三省堂漢和辞典第二版)など多くの意味がある漢字なので、それを使った熟語も多義的になってしまうのでしょうか。万人に明確に伝わることばを使うことの難しさを痛感しますね。



なお、技術分野などでは「要因」「原因」に独特の定義があるようです。辞書の説明とは異なりますので、術語としての「要因」の定義については専門書等でお調べください。