許容される日本語

日々変化する日本語。すでに許容されたのか、まだ誤用と扱うべきなのか。徒然なるままに考えます。

*当blogより引用する際は出典を明記してください。

ご乗車できます

尊敬語は ご/お○○になる
謙譲語は ご/お○○する
が基本です。


また、動詞の可能表現は下記のとおりです。
五段活用動詞…語幹+れる/られる または 可能動詞化する(「書ける」「読める」などのように下一段活用にする)
上一段活用・下一段活用・カ行変格活用動詞…語幹+れる/られる
サ行変格活用動詞…(○○)できる
すべての活用形…終止形+ことができる


それでは、「乗車する」の可能表現である「乗車できる」を尊敬語にするとどうなるでしょうか。
まず「乗車する」を尊敬語・叮嚀語に直して「ご乗車になる」>「ご乗車になります」とし、語幹+れる/られるを用いて可能表現にします。
「ご乗車になれます」です。


では、鉄道駅でよく聞く「ご乗車できます」について、上記の逆をたどってみましょう。
「ご乗車できます」から可能表現を除くと「ご乗車します」です。敬語表現も除くと「ご乗車する」>「乗車する」に戻ります。
ただし、「ご乗車する」は謙譲語ですから、乗車する人(乗客)を低める表現となってしまいます。
しかも「ご○○する」は、「ご招待する」「ご訪問する」「ご依頼する」といった、自分の動作の向う先(尊敬の対象)がある場合にしか使えません。「(自分が)乗車する」を叮嚀にいうなら「乗車いたします」です。


くりかえしますが、「ご○○する」は謙譲語です。くれぐれも、尊敬語のつもりで「ご○○してください」をお使いになりませんよう。
附記:「ご/お」のない「○○してください」は、「○○してくれ」の尊敬表現ではあるものの「ご○○ください」よりはくだけたニュアンスなので、一般的な文章または相手が同輩以下の場合に用いるべきだといえます。目上の人になにかを頼むときは「ご○○ください」を。



なお、英語では一般的に“Can you speak English?”でなく“Do you speak English?”と尋ねます。これは、‘can’を使うと相手の能力を問うことになるからです。
日本語でも同様に、相手の動作について「できます」を用いるのは避けたいものです。「ご○○になれます」でも誤りではありませんが、「ご○○いただけます」のほうがよいでしょう。