許容される日本語

日々変化する日本語。すでに許容されたのか、まだ誤用と扱うべきなのか。徒然なるままに考えます。

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一角を担う

一生懸命、独壇場といったすでに許容された誤用や、青田刈り、汚名挽回といった広く使われる誤用は数々あります。これらを指摘する書籍やTV番組なども多く、日本語の誤用にいくらかでも興味がある人には「常識」のように知られています。
もちろんそれだけが誤用ではありません。
先日、「一角を担う」という表現をみかけました。たとえば「先発陣の一角を担う」のように、「一翼を担う」と同義に使用されます。
「一翼」は「一つの持ち場。一部署」(広辞苑第二版補訂版)です。二つある翼のうち一方の役割を負担するので「担う」を用います。
(附記。「担う」とは「自分の責任として受け持つ」〈新潮国語辞典新装改訂版〉といった意味です)
ところが「一角」は「一つのかど/一つのすみ」(広辞苑第二版補訂版)です。広辞苑の用例は「町の一角」で、場所を意味しますから負担することはできません。三角形の一角や魚の一角の意味だとしてもやはり「担う」のは無理です。「一角を占める」なら誤りではないでしょうが、これはまだ慣用語として辞書に採用されてはいないようです。
驚いたことにこの「一角を担う」、webで検索してみると新聞や雑誌などでもかなり使われていました。言葉はいきもの、日々新たな誤用が生まれているのですね。