許容される日本語

日々変化する日本語。すでに許容されたのか、まだ誤用と扱うべきなのか。徒然なるままに考えます。

*当blogより引用する際は出典を明記してください。

説明申し上げます

「ゆれる日本語」としてもっとも関心が高いのは敬語のように思われます。
敬語にはかならず「敬意の向う先」があるため、敬語を使う相手に「正しい敬語が使われた」=「敬意を示された」と感じてもらわねばなりません。自分は正しいと思っても相手はまちがいだと考える敬語を使っては意味がなく、話者のあいだに共通の認識が必要なのです。ことばはうつりかわってゆくものとはいえ、敬語ばかりは保守的な用法を採用したほうが無難でしょう。
ところが、昨今、「自分の動作には『お/ご』をつけてはいけない」と考える人が少なくないようです。つまり、「ご説明申し上げます」は誤りで「説明申し上げます」が正しいとするものです。
これには驚きました。過去に「ご説明ください」の「ご」の欠落について書いたものの欠落をもたらす原因までは考察しなかったのですが、あれはどのような理由なのでしょうか。


念のため、現代の敬語として広くうけいれられている、自分の動作が相手に及ぶ場合の謙譲語(+叮嚀語)の一般形を書いておきます。
お+動詞連用形+します/申し上げます/いたします(「お話しします」「お話し申し上げます」「お話しいたします」等)
ご(和語であれば「お」)+名詞+します/申し上げます/いたします(「ご説明します」「ご説明申し上げます」「ご説明いたします」等)
(ここに入る名詞はサ行変格活用動詞を作れるもののみです)


ただし、自分の動作が相手に及ばない場合は上記は使えません。たとえば「乗車する」をへりくだって表現したいときに「ご乗車します」とはいいません。その際には
名詞+いたします(「乗車いたします」等)
(ここに入る名詞はサ行変格活用動詞を作れるもののみです)
となります。
この場合の「名詞+いたします」には「お/ご」をつけませんのでご注意ください。


また、「訪ねる/尋ねる/聞く」>「伺う」、「もらう」>「いただく」、「見る」>「拝見する」など特殊形を使う場合もあります。



文化庁の「敬語の指針」が公表されてからもう4年が経ちます。血税を費してまとめられた指針なのに、世の中にはちっとも浸透していないんですねぇ(嘆息)。