許容される日本語

日々変化する日本語。すでに許容されたのか、まだ誤用と扱うべきなのか。徒然なるままに考えます。

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状況を鑑み

日本語は、一つの助詞によって文の意味が変わり得る言語です。この「日本語は」の「は」をべつの助詞に替えてみればわかります。「が」、「も」、「こそ」……。文意の伝わる文章を書く際に助詞の使い分けは重要です。
しかし、文章は複数の文、段落で構成され、読むほうも論旨を文脈から判断するため、実際には助詞の選択はあまり意識されません。
さて、「鑑みる」は「手本に照らして考える」(新小辞林第二版)であり、「鑑(かがみ)」は「手本」(同)です。ただの「考える」ではありません。「手本」「に」「照らして考える」ですから、「先例に鑑みる」のように「に」を使います。
つまり、「状況に鑑み」ならば「状況に照らして(状況以外のことを)考え」であって、「状況のことを考え」ではないのです。
「状況に鑑み」か「状況を考え」か、助詞の使い分けが動詞の使い分けにつながり、正確な文章を書く助けになります。「てにをは」の重要性を認識しなくては、美しい日本語を書く/話すのは難しいでしょう。