許容される日本語

日々変化する日本語。すでに許容されたのか、まだ誤用と扱うべきなのか。徒然なるままに考えます。

*当blogより引用する際は出典を明記してください。

ないです

断定の助動詞「だ」「です」は、体言(「自立語で活用がなく、主語となりうる語。名詞・代名詞の総称〈後略〉」〈新潮国語辞典新装改訂版〉)または助詞に接続するとされてきました。
つまり、形容詞「美しい」は活用があるため用言なので、「です」を接続して「美しいです」とするのは誤りとする考え方です。
(なお、「きれいだ」は形容動詞「きれい(だ)」の終止形であって、「きれい」+「だ」ではありません)
しかし「美しいです」といった形容詞+助動詞「です」の形は、現在、かなり許容が進んだ状況でしょう。「美しい」を敬体にするとき、「美しいのです」と助詞「の」を加える、「美しゅうございます」と連用形(ウ音便)に補助動詞「ございます」を接続する、という形は、現代の日本語話者になじみがなくなってきたからです。
とはいえ、「美しいです」に違和感をもつ人がいなくなったわけではありません。
「この絵は美しい」を敬体にする際に、どうしても「この絵は美しいです」としなければならないのか、「これは美しい絵です」としてもよいのか。文脈から判断して後者でもかまわなければ、「美しいです」に対する違和感を回避することができます。読み手/聴き手に不要なひっかかりを与えることなく理解してもらうほうがよいはずです。


ところで、形容詞「ない」+助動詞「です」は、「美しいです」ほど許容されてはいないようです。
「ない」ことをていねいにいいたいのなら、単純に「です」をつけるのでなく、「ない」の反対語「ある」にていねいの助動詞「ます」と打消の助動詞「ぬ(ん)」を接続すれば(連用形「あり」+未然形「ませ」+終止形「ん」)従来の用法を外れずに済みます。
「ないです」をこどもっぽい表現だと感じる人はまだまだ多いので、公的な文書、目上の人や取引先との会話などでは「ありません」を使うようこころがけましょう。