許容される日本語

日々変化する日本語。すでに許容されたのか、まだ誤用と扱うべきなのか。徒然なるままに考えます。

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ひいては/しいては

「青田買い」を「青田刈り」、「時期尚早」を「時期早尚」、「を得ない」を「おえない/をおえない」、「〜詰め」を「〜尽くめ」、「シミュレーション」を「シュミレーション」など、聞き違いによる誤りは多いものです。多いとはいえ、それを誤りだと認識する人も少なくないので、正しいことばを使うに越したことはありません。


「ひいては」を「しいては」とまちがえるケースもたびたび見かけます。
「ひいては」は「延いて」を強めたもので、「それからひきつづいて。それが原因になって。それをおしすすめて」(広辞苑第二版補訂版)の意です。「財政赤字を削減し、ひいては国債の信用を高める」などと用います。
「しいて」は漢字で書けば「強いて」であり、「無理に。むりやりに」(同)を意味します。「ひいては」とはまったく異なり、そもそも「しいては」ということばはないのです。
(附記。副詞「しいて」+副助詞「は」なら可能ですが用例は限られます)
「シミュレーション」を「シュミレーション」としてもまちがいだと思われるだけで意思疎通に問題はないでしょうが、「ひいて(は)」と「しいて」は音が似ているだけで別の意味をもつ副詞なので、混同しては意図を誤解されることもあり得ます。この誤りには注意するほうがよさそうです。


まちがっておぼえてしまったことばはだれにでもあるものです。日頃からことばに対して関心をもち、少しでも疑問が湧いたら辞書を引く習慣をつけると、思いこみによるまちがいを減らせます。