許容される日本語

日々変化する日本語。すでに許容されたのか、まだ誤用と扱うべきなのか。徒然なるままに考えます。

*当blogより引用する際は出典を明記してください。

デマゴーグ/デマゴギー

北海道日本ハムファイターズが今季のクライマックスシリーズチャンピオンとなりました。
遡って、ファイターズのレギュラーシーズン優勝祝賀会のようすを伝える9月29日付スポーツニッポンの記事には「今夜は生が最高だ〜」――大野奨太選手会長の挨拶なのですが、ほかのスポーツ新聞5紙では「なまら最高」でした。「なまら」といえば、他都府県民の認知度が最も高いであろう北海道方言です。ファイターズ番記者が聞きちがえてはいけません。


さて、これも旧聞に属しますが、安倍晋三首相の国会答弁に「まったくいっていないことをいったかのごとくいうのはこれはデマゴーグなんですよ/あり得ないことをあり得るかのごとくいうのはデマゴーグというんですよ」とありました。

デマゴーグ】煽動政治家。民衆煽動家。
デマゴギー】→デマ
【デマ】(デマゴギーの略)1 事実と反する煽動的な宣伝。悪宣伝。2 ためにする噂話。中傷。
広辞苑第二版補訂版)

「まったくいっていないことをいったかのごとくいう」だけで「煽動的な宣伝」「中傷」にあたるのかは疑問のあるところです。また、「デマ」ということばは、隠れて事実と異なる噂を流す場合に用いるのがふつうですから、面と向って発した皮肉のことを表すのに適当とも思えません。
しかも「デマ(デマゴギー)」は物事、「デマゴーグ」は人物です。「それは事実でないからデマだ」どころか「煽動政治家だ」ときめつけられては、質問者の長妻昭衆議院議員(「デマゴーグ」を「煽動政治家」といいかえています)が撤回を求めたのも当然といえます。


北海道の球団を担当する記者なら北海道方言をまちがえない。政治家(政治学科卒業ならなおさら)なら政治用語をまちがえない。
そうした期待がなかなか満たされない今、米国で大統領候補の放言により注目されるファクトチェック(事実確認)が重要です。webのみならずマスコミで流布される情報も、一つだけを鵜呑みにしない習慣をつけましょう。



附記。
クライマックスシリーズ」って固有名詞だからそう記すしかないんだけど、頂点は日本選手権でしょ、とか、英語圏の男性に近畿グレートリングと同種の冗談の種にされたら厭だなぁ、とか、ほんとは使いたくない。