許容される日本語

日々変化する日本語。すでに許容されたのか、まだ誤用と扱うべきなのか。徒然なるままに考えます。

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ゴールが勝利をもたらせた

学校で国文法を教わったことのない人が存外に多いようです。英語文法や文語文法は習っても、口語文法の授業があった記憶はない。いわゆる学校文法には問題も多々指摘されており、かといって万人の認める口語文法は今のところ存在しないため、教えるべき国文法がないということかもしれませんが、五段・上一段・下一段・カ行変格・サ行変格という口語動詞活用の種類を知っていれば活用の誤りは防げます。
「もたらす」は五段活用動詞ですから、「もたらさ-ない/もたらし-ます/もたらす/もたらす-とき/もたらせ-ば/もたらせ」と活用します。「もたらすことができた」(可能・過去)の意味で仮定形を使うのであれば「もたらせた」となります。しかし、過去完了の助動詞「た」をあとに接続して動作が完了したことを表すのであれば、助動詞は用言なので連用形を使い「もたらした」となります。このように文法に照らして考えてみると「もたらせた」が誤用であることは理解できます。
残る問題は、この語が五段・上一段・下一段のどの活用をするかの見極めです(カ変/サ変はくる/するのみ)。見分け方としては、「ない」を付けて未然形をつくり、活用語尾の母音がaであれば五段、iであれば上一段、eであれば下一段、とされます。
とはいえ、「もたらせた」に違和感を覚えなければ、「もたらせない」を可能の意味を含まない打消(本来であれば「もたらさない」)として使用することもあり得ます。もしそうであれば、「もたらす」は、五段活用と終止形「もたらせる」の下一段活用との二態をとる動詞として定着するかもしれません。可能の意味のない「もたらせない」、新たな終止形「もたらせる」が今後許容されるのかみてゆきましょう。