許容される日本語

日々変化する日本語。すでに許容されたのか、まだ誤用と扱うべきなのか。徒然なるままに考えます。

*当blogより引用する際は出典を明記してください。

人は、人から育てられる


先日、民進党岡田克也代表が、自身についての蓮舫代表代行の「ほんとうにつまらない男」との発言を受け「妻にいわれればショックを受けるでしょうが」蓮舫氏の冗談だから気にしない旨を語りました。
この会見を扱った記事やニュースの見出しの大半は、妻「に」いわれれば云々。ただし一部は、妻「から」いわれれば、でした。岡田代表が助詞「に」を用いなければ、「から」の見出しがもっと多かったのではないでしょうか。



格助詞「に」と「から」を、広辞苑第二版補訂版は下記のように説明します(用例は省略、「<」以下は引用者補記)。


「に」
1 時を指定する。
2 所・方角を指定する。
3 対象を指定する。
〈中略〉
5 資格を指定する。…として。
6 受身・使役の相手を示す。
7 目的を指定する。イ 行為の目的を示す。ロ 目的地を示す。
8 原因を示す。
9 結果を示す。
10 状態を示す。いわゆる形容動詞の連用形、たとえば「あきらかに」「ゆたかに」などの「に」も、これに相当する。
11 手段・方法を示す。…を用いて。…によって。…をたよって。
〈中略〉
13 比較の基準を示す。…よりは。
14 累増・添加を示す。<「泣きに泣いた」など


「から」
1 (場所を示す語について)出発点や通過する経路を表わす。
2 (時を示す語について)以後。以来。
3 手段を表わす。…で。…によって。
4 原因を表わす。…によって。…のために。
5 理由を表わす。…ゆえ。
6 それを先にする意を表わす。
7 起算のはじめを示す。…ないし。…をはじめとして。
8 以上。うえ。<「千人からの人」など


「に」は近年、意味が一部重なる「から」に置き換えられることが増えました。「から」には「受身・使役の相手を示す」用法はなかったのですが、いまやこの用法でも「から」が優勢かもしれません。
今回の記事タイトルは、公共広告機構(当時)の2008年のキャッチコピーを借りました。2008年にはすでに受身・使役の相手を示す「から」がかなり許容されていたとみられます。2016年現在、「犬○噛まれた」の助詞としてはまだ「に」が選ばれると思われるものの、そのうち「犬から噛まれた」が一般的になるのでしょうか。