許容される日本語

日々変化する日本語。すでに許容されたのか、まだ誤用と扱うべきなのか。徒然なるままに考えます。

*当blogより引用する際は出典を明記してください。

元ロッテエースに告訴

「『てにをは』までこまかく指摘されていやになる」などと聞くにつけ、助詞を軽視する人が多いことが気になります。助詞の正しい使い分けは日本語を話す/書く際に重要だからです。


先日ある雑誌に「元ロッテエースに告訴」という見出しがありました。記事を読んでみると、韓国プロ野球の元エース投手が告訴されたという内容でした。
この内容をごく簡潔に記述するなら、
元エースを主語に受身の文を作り「元エースが告訴された」とするか、
被害者を主語にして「被害者が元エースを告訴した」となります。
用いる助詞は、主語を表す格助詞「が」、もしくは、動作の目的を表す格助詞「を」です。
動作の起点を表す格助詞「に」の出番があるとすれば、「元エースが被害者『に』告訴された」です。
つまり、「元ロッテエースに告訴」の見出しだけを読むと、「告訴された」の「された」を省略したのだと考え、「に」は動作の起点を表していて「ロッテ球団の元エース『が』だれか『を』告訴した」のだ(元エースは被害者である)と誤解してしまいます。
見出しは記事の大意を理解してもらうためのものですから、内容が誤解されるようでは見出し失格です(ミスリードするケースは別として)。この場合は「元ロッテエース『を』告訴」とすれば誤解は生じません。


人に話すのも文章を書くのも、話者/筆者の意思を伝えるのが主要な目的です。助詞の使い分け一つで主旨の理解が容易にも困難にもなるので、「『てにをは』なんて」と軽視せず、助詞にも注意をはらうことをお勧めします。