許容される日本語

日々変化する日本語。すでに許容されたのか、まだ誤用と扱うべきなのか。徒然なるままに考えます。

*当blogより引用する際は出典を明記してください。

2000本安打

*今回の記事、実は「組版ルール」ではないのですが、現場関連ネタってことで御容赦のほど。


2012年は、日本プロ野球NPB)において、四人もの選手がプロ通算2000本めの安打を記録した年となりました。
四人とは、稲葉篤紀北海道日本ハムファイターズ)、宮本慎也東京ヤクルトスワローズ)、アレックス・ラミレス(横浜DeNAベイスターズ)、小久保裕紀福岡ソフトバンクホークス)です。
〈余談ながら、ラミレスは米国大リーグ(MLB)での記録にNPBでの記録を加算した「2000本」であるため、「名球会」入会資格は与えられません。NPBMLBの「日米通算記録」ならOKでも、MLBNPBの「米日通算記録」はだめ。これまでの該当者は半分以上がMLBでの安打だけれど、ラミレスは95%以上をNPBで打ったのにね。
とはいえ、ラミレスは今シーズン終了時点でNPB通算1993安打なので、来年はまず文句なく名球会入り。名球会サイトの「名球会入会予定者」リストにも名前があるし。
ところで、米日通算2000安打をチーム本拠地で達成したにもかかわらず祝福のメッセージなどいっさいなかったというのはいかがなものか〉


いや、記事の眼目は2000安打そのものではなくて、あくまで「2000本安打」。
2000本安打、200勝利、250セーブ」……なんとなく据わりが悪くありませんか?
200個勝利、250個セーブとはいわないんだから(800本本塁打とか1000回投球回とかもいわない)、「2000安打、200勝利、250セーブ」のほうがキレイじゃないですかぁ〜。
このような表記が統一されてなくて美しくない状態のことを「不統一」と呼び、出版物ではふつう修整されます。以前「行う/行なう」の記事の最後に書いたように「日本語に関する感性や作業の正確さなどに対して読者に疑いを抱かせ」るからです。そういう夾雑物は読書という行為のじゃまになります。文章は、意図せぬ妨碍物でひっかかることなく滑らかに読み進められなくてはなりません。<意図して読者をたちどまらせる場合は別。
2000本安打」と「2000安打」が混在してるとか、「四人」と書いたり「4人」と書いたりとか、「行う/行なう」のような送り仮名、「邪魔/じゃま」といったトジル/ヒラクなんかが不統一の例です。
ただし、不統一と使い分けは異なります。たとえば「初め/始め」「望む/臨む」「解る/判る」を仮名書きせずに意味によって別の漢字を用いる場合などが使い分けです。「1死一・二塁」は算用数字と漢数字の不統一ではなく、アウトカウントは数値として数えられるものだから算用数字、一塁や二塁は分ち難い一つのことばだから漢数字、てことです。
統一と使い分けを十分に考えて書かれた文章は流麗で豊潤です。そんな文章を書きたいものですが、なかなか難しいなぁ。




明日から12月。銀座通り自体のクリスマスイルミネーションもそろそろ始まるようです。通り沿いのブランド店なんかはだいぶ前から華やかですけど。
BVLGARIの蛇のイルミはcoolだなぁ(お向かいのCartierがひねりのない赤いおリボンなだけに)とは思うものの――クリスマスもまだ先なのに、もう来年の干支かよ!と毒づきたくもなるってもんで。<ほんとのところは干支とは関係なくて、BVLGARIの伝統のモチーフSERPENTI。
すでに仕事は年末進行、加えてオフタイムも忙しく(「忙しい」にフィギュアスケートグランプリシリーズ全大会全種目〈女子シングルズ除く〉全選手の演技をTV観戦、等も含まれるので同情は買えない)、blogを書く時間がつくれません。「財政」のアクセントはNHK編日本語発音アクセント辞典改訂新版によると「ザ」イセイじゃなくザ「イセイ」なんだけど(あと、「崖」を「壁」とまちがえちゃう人が多いのはなぜ?)、とか書きたいことはけっこーあるんですが。
次回更新は年末でしょうか……もしかしてそれまでにあと1回番外篇なネタで書くかもしれませんけれども予定は未定。