許容される日本語

日々変化する日本語。すでに許容されたのか、まだ誤用と扱うべきなのか。徒然なるままに考えます。

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スペイン語名前を現地発音に近いカタカナで表記してみる

RWC2007:第6回ラグビーW杯開催記念番外篇「W杯出場国の主要言語のカナ表記に挑戦」その2、スペイン語。今大会ではスペイン語がおもに使われている国はアルヘンティーナだけですね。
どうも「アルゼンチン」という語感が美しくなくて厭なのでいつもアルヘンティーナと記しています。英語でも名詞は‘Argentina’で、形容詞になってはじめて‘Argentine’「アージェンタイン」なのになぁ。
さて、スペイン語アルファベットでも‘Argentina’と表記するのですが、これを「アルヘンティーナ」と読むのは、‘ge’以外はしっくりくるでしょう? スペイン語はとてもカナ表記するのが楽な言語です。
まず母音が‘a’=「ア」・‘e’=「エ」・‘i’=「イ」・‘o’=「オ」・‘u’=「ウ」の五つで、どんな綴りでもこう読みます。母音が連なっても、‘ua’なら「ウア/ウワ(この二つの中間くらいの音なのでカナ表記はどちらでも)」だし‘ie’なら「イエ」だし、フランス語のような‘ei’は「エ」で‘eu’は「ウ」で‘eau’は「オ」で……といった細かい暗記は不要(下記例外参照)。
子音もだいたいにおいてローマ字読みでだいじょうぶ。日本人には難しい巻き舌もカナ表記にするだけならラ行ですからね。
アクセントも原則として「最後から二つめの母音を強く」読めばよいので、かんたんに発音できます(「強く読む」=「長く伸ばす」ではないのですが、便宜的に長音「ー」を使ってカナ表記します)。
ただし、すべてローマ字どおりとはいきません。主な例外を以下に列記します。
・‘que’は「ケ」、‘gue’は「ゲ」、‘qui’は「キ」、‘gui’は「ギ」。
・‘v’はバ行、‘z’はサ行。‘Venezuela’は「ベネスエーラ」です。
・‘ca’は「カ」、‘ce’は「セ」、‘ci’は「シ」、‘co’は「コ」、‘cu’は「ク」。語尾にくる‘c’は「ク」。
・‘ch’はチャ行。‘cho’は「ショ」ではなく「チョ」です。
・語尾の‘d’は消えるか英語の‘th’音になる。‘Real Madrid’は「レアルマドリー」が現地発音に近い表記。
・‘ga’は「ガ」、‘ge’は「ヘ」、‘gi’は「ヒ」、‘go’は「ゴ」、‘gu’は「グ」。‘j’はハ行。‘ge’‘gi’の‘g’と‘j’は発音記号では[x]ですが。‘j’のあとに二重母音がきたときに注意。‘jua’は「フア/フワ」、‘jue’は「フエ」、‘jui’は「フイ」、‘juo’は「フオ」です。「ファ」「フェ」「フィ」「フォ」ではありません。
・‘h’は読まない。
・‘ll’は、リャ行だったりヤ行だったりジャ行だったり。「イ」「リ」「ジ」は容易に転訛するので、カナ表記としては「アグーリャ」でも「アグーヤ」でも「アグージャ」でもよろしいかと。「スペインはリ、中南米はジ」とはいいきれないそうですよ。
・‘n’(エネ)はナ行でよいのですが、‘n’の上に‘~’が付く(エニェ)とニャ行になります。言語独特の符号は割愛するつもりでしたが、エニェは人名にもたくさん使われるので……。今回のロスプーマススコッドではヌーニェス=ピオーセクの綴りに出てきます。
・‘s’はサ行、ただし‘d’‘g’‘l’‘m’‘n’‘v’など有声子音の前では「ズ」になる。
・‘ti’‘tu’は「ティ」「トゥ」、‘ta’‘te’‘to’は「タ」「テ」「ト」。
・‘x’は「クス」、ただし語頭か子音の前にあるときはサ行(たとえば‘Extremadura’は「エストゥレマドゥーラ」)。でも‘Mexico’は「メヒコ」です。
・‘n’・‘s’以外の子音で終わる単語は最後の音節にアクセントがくる。‘Pichot’は「ピチョート」となりますね。‘Pinochet’は「ピノチェー」と聞こえるので、最後の‘t’は消えるのかも。ところでアクセントについては例外が多いのですが、見分け方は「アクセント符号があれば例外としてそこを強く読む」なので、英語表記でアクセント符号が抜けているとお手上げ……。