許容される日本語

日々変化する日本語。すでに許容されたのか、まだ誤用と扱うべきなのか。徒然なるままに考えます。

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エネルギーは欲しい。でもカロリーはいらない。

不特定多数に向けた文章を書くときに悩むのが、わかりやすさと正確さのバランスです。
肥満予防のためエネルギーを消費量より多く摂らないようにしましょう、という文を書くとして、この「エネルギー」はそのままでよいのか、それとも「カロリー」と書き換えたほうがよいのか。
厳密にいえば、カロリーは熱量を量る単位ですから、「カロリーの摂りすぎ」は誤りです。重い荷物を「kgの多い荷物」とは表現しません。ただし、「カロリーの高い食べ物」(英語でも‘food with higher caloric content’〈プログレッシブ英和・和英中辞典〉)ならすぐに通じても、「エネルギー量の多い食べ物」ではなんのことか理解してもらえないかもしれません。
とはいえ、「エネルギーは欲しい。でもカロリーはいらない」となるとどうでしょうか。エネルギーとカロリーがそれぞれ異なる物質ということになってしまいます。これは栄養ドリンクのキャッチコピーですから、疲れはとれてもエネルギー量は少なく肥満の心配はないと消費者にアピールするにはよいのかもしれませんが、かなり正確さに欠けます(エネルギーを含み「カロリー」を含まないと表示するならば、正確さに欠けるどころか不当表示にあたるでしょう)。
情報の氾濫する現代でも、文章の第一の意義は情報を正しく伝えることであってほしいものです。