許容される日本語

日々変化する日本語。すでに許容されたのか、まだ誤用と扱うべきなのか。徒然なるままに考えます。

*当blogより引用する際は出典を明記してください。

ここではきものを、おぬぎください

読点の役割は、第一に、誤って読解するのを避けることにあります。「ここではきものをおぬぎください」では着物を脱ぐのか履物を脱ぐのかわからないため、「ここで、はきものをおぬぎください」若しくは「ここでは、きものをおぬぎください」と読点を打つのです。
しかし昨今、文意と無関係に用いる読点が増えています。
並列の文節のあいだに機械的に打つ。「彼はそわそわして立ったり、座ったりした」
漢字やひらがなが続くところに機械的に打つ。「急遽、登板した救援投手が連打を浴びた」
文の半分辺りに機械的に打つ。「ポイントとはゴールと、アシストを合計したものである」
それでも上記の例文なら、読点が適切に使われていればもっとわかりやすい(彼はそわそわして、立ったり座ったりした/急遽登板した救援投手が、連打を浴びた/ポイントとは、ゴールとアシストを合計したものである)とはいえ、意味は通じます。が、意味不明ではないからと読点の適切な用い方を理解しないままだと、「ここではきものを、おぬぎください」式の、文意を汲みとれない文を書いてしまうことになりかねません。
意図を伝えるために書くはずの文章が正確に理解されなくては困ります。読点の効果的でない文章が増えているといっても、それを許容するわけにもいきません。読点にも気を配った明解な文章は、今後も変わらず求められるはずです。