許容される日本語

日々変化する日本語。すでに許容されたのか、まだ誤用と扱うべきなのか。徒然なるままに考えます。

*当blogより引用する際は出典を明記してください。

世界的な景気後退

以前「ケガすなわち外傷と故障すなわち障害が混同されています」(『ニッカン+』2010年12月号「スポーツ外来診察室から」)という指摘を読み、そういえばblogで安易に「○○選手は故障のため出場選手登録抹消」などと書いたことがあったかもしれない、と反省しました。骨折から回復するまで出場しないような場合は、けがであって「故障」ではありませんね。


そこで今回の話題。現在の経済情勢は「世界的な景気後退」と表現できるでしょうか。
「景気後退の定義は『2四半期以上連続してGDP成長率がマイナスとなること』である」とするならば、景気後退局面に入った国は数としては少なく、「世界的な景気後退」とはいえません。
「景気後退の定義は『経済成長率の鈍化』である」との立場に立ったとしても、いくつもの国でGDP成長率が対前年比プラスの伸び幅を示しており、「世界的な景気後退」というのはためらわれます。
経済用語の「景気後退」は感覚的な「不景気」とは異なるため、用いる際には注意が必要です。世界の経済情勢を評するなら「世界的な景気減速」程度に留めるほうがよいでしょう。


要は「用語が正確でなくてもだいたいの意図が通じればいいんだ」という意見を認めるか否かの問題ですが、日本語のプロであるべき(あらまほしき?)作家、記者、編集者、ライター、アナウンサーなどにはぜひ、術語の定義に気を配ってほしいものです。